中国名山・泰山 本文へジャンプ


五岳独尊・泰山


泰山は山東省中部に位置する世界遺産の山。
古来、中国では南岳・衡山(湖南省)、中岳・崇山(河南省)、西岳・華山(陝西省)、北岳・恒山(山西省)と共に中国五岳のひとつに数えられた。この五岳の中でも東岳・泰山は最も重要な山とされ、五岳独尊と称されている。

その理由は、泰山の神「玉皇大帝」が死後の世界を司る閻魔大王、その妻「碧霞元君」が生と出産を司る女神だと考えられたからで、中国歴代王朝の皇帝たちは、帝位の正当性を示すために泰山へ赴き、山頂で天地を祀る「封禅」の儀式を執り行った。歴史上72人の皇帝が封禅の儀式を行ったと記録されている。

もちろん、皇帝だけでなく、孔子や杜甫といった文人墨客から庶民に至るまで、泰山信仰は中国に強く根付いている。泰山に登り、日の出を見ることは中国人の夢のひとつである。また、泰山の神は江戸時代の日本でも信仰されていた。

山麓の泰安の町には、北京の故宮を小振りにしたような岱廟があり、ここから一直線に伸びる登山道には、有名な7000段の階段が山頂まで続いている。皇帝から庶民までが歩いた階段をたどり、山頂から御来光を拝んでみよう。


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岱廟

東岳廟、あるいは泰山行宮ともいう。泰山の玉皇大帝を祀った宮殿のような廟。
泰安の町の中心部に、周囲をぐるりと城壁で囲んだ岱廟は、北京の故宮、曲阜の孔廟と共に、中国でも三箇所だけ許された宮殿様式で作られている。いくつもの門をくぐり、歴史的な建築群を見ながら進んでいくと、壮麗な宮殿が現れる。城壁に上がってみると、泰山に向かって一直線に建築物が配置されているのが分かる。

岱廟は秦の始皇帝が封禅の儀式を執り行って以後、歴代王朝によって拡大され、皇帝が訪れて封禅を行う神聖な場所となった。古代には、皇帝と認められるためには泰山での儀式が欠かせなかったため、古い時代ほど多くの皇帝がここを訪れた。

境内にある5株の柏の木は「漢代柏」と呼ばれ、漢の武帝が植えたものと伝わっている。
その他、皇帝たちが残した碑文や、遺跡を辿って見て行くと、見学だけでたっぷり1日はかかってしまう。











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泰山登山

岱廟の後ろに、岱宗坊があり、ここから泰山に向けてまっすぐな道が続いている。
これが泰山登山のメインコース。牌坊が建ち並んだ坊群を過ぎて紅門へ至り、山頂部の南天門まで7000段を数える世界一の階段が始まる。最初はゆるやかな登りの中に、歴史的な寺院や見所が点在している。

現在では、泰山の中腹にある中天門まで自動車道路が通じ、泰山山麓、大衆橋のバスターミナルから登山バスがある。大衆橋に近い渡暇村には、登山者用の山荘がかたまっている。
バスの終点・中天門は宿泊施設やレストラン、売店なども揃っている。中天門から上部、3.5kmが泰山登山道のハイライト部分なので、7000段全部を踏破したことにはならないが、泰山登山の醍醐味を味わうことができる。

中天門から南天門まで、階段を登れない人や観光客にはロープウェイもある。
全長2000mのロープウェイに乗れば、登山道を歩かなくても泰山山頂部まで行くことができる。

中天門から南天門

泰山登山道の後半部分で、いわゆる7000段の階段のハイライト部分である。
数箇所に休憩所や売店があり、水やスイカ、軽食などを売っているので、休憩しながら進む。
中天門からしばらくの間は、深い森に囲まれたやや緩やかな階段を行く。横には谷川が流れている。雲歩橋で対岸へ渡り、秦の始皇帝が雨宿りしたお礼に、松の木に官位を授与したという「五大夫松」をすぎると、ようやく階段も角度を増してくる。


谷川を離れて、たくさんの碑文や文字が彫り付けられた岩を見ながら、岩壁沿いの急登りになってくる。
前面に景色が開けて、はるか頭上に南天門が見えてくると「対松亭」。ここから南天門までの間が1633段の階段がある十八盤と呼ばれる難所。距離800mで標高差400mを登る。


対松亭から龍門坊までは緩い「慢十八盤」、龍門坊から昇仙坊までは「不緊不慢十八盤」、昇仙坊から南天門までは「緊十八盤」と呼ばれ、南天門手前では気を抜くと転落しそうなほど急なので、恐る恐る這うように登っていく。南天門がだんだん近づいてくると、階段を上り詰めて休憩をとる人たちの声も聞こえてくる。
ロープウェイがあるものの、山頂一帯で売られている土産物などは、現在でも人力で階段を運び上げている。天秤棒の両端に重い荷物を下げて、たんたんと登る姿を見ることが出来る。




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泰山山頂部

南天門に辿り着くと、階段の向こうに谷間が開けて、山麓の泰安の町が広がっているのが見える。
南天門の先にあるのが「天街」ホテルやレストラン、商店が集まって賑やかな街をつくっている。天街から広い石畳の道を進むと、階段の上に泰山山頂部では最大の建築物「碧霞祠」があり、生と誕生を司る碧霞元君を祀っている。3000uの境内に、1000年前の宋代に建築された道教寺院が建ち並んでいる。







碧霞祠から泰山の山頂へ進む。
多くの碑文が岩壁にびっしり刻まれた唐摩崖があり、その中には唐の玄宗皇帝が泰山で封禅の儀式を執り行ったときに彫った996文字の紀泰山銘之碑がある。その先に、泰山山頂1545mの玉皇頂がそびえている。
山頂の最高点は鎖で囲まれた露岩になっているが、それを取り囲むように、泰山の最高神である玉皇大帝を祀る玉皇殿の道教建築が建ち並び、参拝者があげる線香の煙が立ち込めている。古代の皇帝が封禅の儀式を行った封禅碑もある。








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泰山で御来光を見る

玉皇頂から奇岩の間を進み、気象台の建物がある日観峰へ。
ここは泰山山頂の東端にあたり、御来光を拝む名所になっている。御来光を拝むには、山頂部のホテルに泊まるか、山麓の泰安市内に泊まって深夜登山することになる。深夜登山の場合は、夜12時頃に大衆橋を出発する登山ツアーバスに乗って中天門へ行き、3時間ほどかけて山頂へ階段を辿る。もちろん、景色は見えないが、夏は夜の方が涼しくてよい。また、休憩所は24時間開いている。山頂部に着いて後ろを振り返ると、泰安市の夜景がまばゆい。
夜明け前は非常に冷え込み、山頂でレンタルしている人民解放軍のコートを借りる。日観峰には大勢の人々が詰め掛けて、日出を待ち構えている。雲海の間からオレンジ色の光が差し込み、始めはゆっくりと、やがてぐんぐん勢いを増して太陽が昇ってくる。山頂部一帯は光に照らされて、あちこちから溜め息や歓声が上がる。












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