中国旅行記 上海散歩(2000.上海) 本文へジャンプ

浦東未来都市


オールド上海の顔である外灘から黄浦江をはさんだ対岸には、今や上海を代表する風景となった浦東新区の摩天楼群がそびえている。100mを超す超高層ビルはどれも個性的なデザインを競い合い、ちょっと昔の映画に出てくる未来都市のようにクールで無機的な格好良さがある。朝は壁面のアルミとガラスが太陽の光を反射して辺りをまぶしく照らし、夜にはライトアップの冷たく青い光にビル群が浮かんで幻想的な海中都市を出現させる。ここはもう中国じゃない。

 

かつて、川向こうという不便さから未開発地域だった浦東は、橋やトンネル、地下鉄の開業、新空港の建設によってあっという間に発展する上海の「龍の頭」に成長した。その浦東の玄関は、地下鉄2号線陸家嘴站。 朝のラッシュ時間などは、日本以上の驚異的な混み方、駅構内通路にとんでもない人波が流れている。
地上にはバスから地下鉄駅に向かって通勤客が全力ダッシュする光景が広がる。2台、3台と客を満載したバスが到着する度、吐き出された乗客の群が我先に駆け抜けてゆくのである。駅から地上に出ると、頭上にそびえるタワーに圧倒される。

「東方明珠電視塔」高さ380mを誇るアジア一のテレビ塔だ。上海の市街ならどこからでも目立つが、やはり足元から見上げると迫力が違う。「でかっ」意外の言葉がちょっと出てこないのだ。
ロケットを模したであろうタワーには、これも宇宙っぽい球体がくっついてて、展望台やホテルになっている。先に昔の映画と書いたがこれぞSF未来都市、斬新なような、懐かしいような奇妙に不細工で、それでいて圧倒的に格好いい。うーむ万里の長城や紫禁城の人をあっと言わせるスケールの建築は、現代にまで続く中国の伝統なのだろうか?

展望台は2つ。下の球体でエレベーターを乗り換えるので、上の球体に行くには別料金がかかるが、景色はそんなに変わらない。展望台から上海を眺めると、足元でカーブする黄浦江には大小さまざまな船が行き交い、対岸の外灘に並ぶ洋風建築群はおもちゃのように小さく見える。そして彼方は・・・スモッグで見えない。空気の悪さを実感するときだ。





タワーの下から真っ直ぐに延びる世紀大道に沿って歩く。
ここは名古屋の100m道路から緑地帯を除いたような広い自動車道。向こうへ渡りたくても、他の道のように左右を見てひょいと渡ることはできない。そして地下道が全然ないのもネック。地下鉄の出口を間違えて歩き出すと、また来た道を戻ることになってしまうのだ。はりぼってっぽい美食街を横目に到着するのは、世界で3番目に高い「金茂大廈」

また展望台だが、私は高い所が大好きなのでつい足が向いてしまう。とはいえ、景色は同じなので、タワーに昼行ったなら、金茂ビルには夜景を見に行くのがおすすめ。何と言っても東方明珠の眺めが一番だ。市街から見上げるばかりだったタワーを、見下ろすことができるのは450mのこの展望台だけである。
望遠鏡を覗くとタワーの球体から外を見る人の姿がはっきり分かって面白い。きっと向こうからも私の姿が覗かれているのだろうなあ。



青い光の浦東未来都市と、オレンジ色に包まれた外灘の夜景を十分楽しんだら、ビルの芯部分から内部を見下ろそう。グランドハイアットホテルのロビーまで巨大な吹き抜け空間がある。高すぎてかえって実感の湧かない外に比べ、屋内の高さ感覚は妙にリアルでくらくらしそうだ。そして、ホテルの通路は丸見え。上層階のスイートにはドアを警備する武装警察や、SPに囲まれたVIPの姿が。おお、映画みたいだ。あれは政府高官か外国要人か。上から覗かれていることは知っているのだろうか?防弾ガラス越しとはいえ他では見られない光景に、ゴルゴ13のような気分が味わえる。

対岸に比べて観光客の姿が少ない浜江プロムナードから川越しに外灘を眺め、新型の「観光隧道」を利用して向こうに渡る。黄浦江の両岸を結ぶ観光地下鉄は、スキー場のゴンドラのような車両だった。ただ川を潜るだけでは能がないと考えたのか、地下鉄トンネルはレーザー光線が飛び交い、光の帯がグルグル渦巻いてばかばかしくも楽しい。
ただ、あまり人気がなさそうな原因は片道30元という、これまた人をばかにした料金設定のためか。


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外灘の熱い夜

 
黄浦江に面してイギリス租界時代の洋風建築群が建ち並ぶ外灘は上海の顔だ。
緑のとんがり屋根が目印の和平飯店北楼、赤と白の同ホテル南楼、時計塔を載せた香港上海銀行、味のある重厚な建築がそろう様はやはり壮観である。そして、対岸には外灘と対照的な浦東の超高層ビル群。新旧の上海を象徴する外灘からの風景は、この都市の歴史そのものだ。



北端のガーデンブリッジに接した黄浦公園から、南端の十六舗フェリーターミナルまで、河岸に沿って展望デッキが整備され、朝から夜まで人の絶えることがない。ここは市内の徒歩圏内にホテルをとって、時間ごとに移り変わる外灘の光景を眺めるのがおすすめである。
朝、早起きして外灘に出ると、展望デッキはお揃いのジャージに扇子を持って舞うおばさんグループ、太極拳のお爺さんたち、くるくる社交ダンスで回る集団、運動をする人たちでいっぱいだ。テレビ局も外灘から朝の中継をするし、観光客もちらほらいるので、やはり見られることを意識して運動するのだろう。どの人もなんだか誇らしげなのだ。



白昼の外灘は観光客ばかりになる。みんな浦東をバックに記念撮影に余念がない。注目すべきは写真が大好きな中国人のポーズの決め方。念入りに手の位置、顔の向きを調整し、ちょっと気恥ずかしいくらい決めてモデルばりに写真に収まる。おかしくなるくらい真剣なのである。彼らの写真好きを実感するのが、外灘に並ぶ電脳写真屋。何のことはない合成写真であるが、やたら多い。夜景や空中から見た上海、何でも顔と合成してくれるのである。この辺りで買い物すると合成写真3割引のチケットをくれるので、やっぱり人気があるんだろうなあ。

さて、外灘が最も熱くなるのが夜。7時には両岸が一斉にライトアップされ、いい雰囲気を求めてどっと人が繰り出す。ただ、1人や男同士、女同士で行くと寂しくなるかも。まるで京都の鴨川に並ぶカップル状態というか、密着度からいけばそれ以上の熱い様子を見せつけられる。夜の外灘は「私とあなたと夜景だけ」の世界なのである。





私は2人連れだから、別に寂しくもなく夜景を楽しめるけど・・・と思ったら、2人連れにも敵がいた。花売りおばちゃんである。バラの花束を抱えたおばちゃんが外灘のどこにでもいる。そして、カップルに近づいては男に花を売りつけるのである。おばちゃんの強みは男が断れない状況を知っていることだ。
断ると「男が女に花を贈らんなんて」とおおげさに言う。値段は1本10元。うっ高い。値切ると「女に贈る花を値切るなんて」ととても厳しい。根負けして1本買うと、別のおばちゃんが来て「女には1本では足らんぞ」
うるさいっ、1本で十分なの。外灘の夜は熱い、のか。

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元禄回転寿司


外灘の自動車道である中山路と北京東路の角に元禄回転寿司がある。
上海を中心にチェーン展開しているらしいが、客は中国人客しか見なかった。というのは、会員カードを作ったので結構通い詰めたのである。

場所の割には値段も安く、サービスもよかったし。回転寿司コーナーにはプラスチックのカップをかぶった寿司がまわっていたが、生ものには手を出さず、なぜか京都火鍋やししゃも、鮭炒飯などを食べたのだった。
ただ中国のレストランで苦手なのは、専門の服務員がつくこと。注文取り専門、運び専門、お茶つぎ専門、やたら多いのである。しまいにはすっかり顔を覚えられてしまったが、お茶つぎの小姐にやたらのぞき込まれても、ゆっくり食事ができないよ。

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黄浦江カラオケクルーズ

 
私は人混みがきらいなので、あまり観光名所には興味がない。みんながきゃあきゃあ言うような場所なんて面白くないじゃないか。「裏道にこそ花がある」などとうそぶいている私だが、高い展望台と観光船だけは別である。べたな観光だが、好きなのだ。

黄浦江クルーズは両岸の租界時代の建築と超近代ビル群が一度に眺められるので、私が一番好きな観光船である。ここでもやはりおすすめは夜。7時出航の船だ。昼のうちに乗船場のチケット売場で券を買い、少なくとも30分前には列に並んでおく。こうしないと特等席は取れないのだ。冷暖房完備の豪華船室よりも、外の方が眺めはいいので普通券で十分。

  
クルーズ船「黄浦江遊覧」はきんきらの宮殿を載せ、双胴の舳先に龍をつけた中国風の観光船である。目的の特等席は屋上のデッキ。前後方向に椅子を確保すれば両岸の眺めはばっちりだ。
開門と同時にどっと乗客がなだれ込むので、先を争って船の階段を駆け上がる。屋上に出たら、そこらにあるプラスチックの椅子を手にデッキへ急ぎ、場所を確保すれば準備OKである。余裕を持って見渡せば、外灘の建築群はオレンジ色の暖かい光に映えて昼間よりもずっときれいに見え、浦東には東方明珠を先頭に青く浮かぶ超高層ビルが幻想的な姿を出現させる。期待で胸が高鳴る時である。



やがて、汽笛と共に出航した遊覧船は、黄浦江の真ん中を進んで行く。浦東の未来都市が近づき、ゆっくりと後方へ遠ざかる。屋上ではバンドの生演奏がいい雰囲気の曲を奏で、なかなか演出も心憎い。
市街を離れて上海港の工業地帯に入った船は、びっくりするほど巨大なタンカーや、入港待ちの貨物船とすれ違い、煌々と輝く造船所の光を見て、揚浦大橋でUターンする。あとは同じルートを戻るだけである。
すると雰囲気のある曲を流すバンドが、歌手を入れた歌謡ショーを始めた。すごいな、歌手付きだとは。だけど、何かおかしい。音痴な歌が混じるのである。1曲1曲歌う人が違うし。司会者が歌う人を募集を募集する。



なんだ、カラオケならぬバンドの生オケ大会だったのだ。景色を眺めていた人たちが、飽きたとばかりに生オケに集まって行く。美しい夜景に響くおやじの熱唱。黄浦江クルーズはすっかりカラオケ船と化していた。やがて、静かに乗船場が近づき、船はがががんと停船する。バンドもぶちっと演奏をうち切り、蛍の光に切り替えた。途中まで歌ったおやじはどうしたのだろう?黄浦江クルーズは雰囲気抜群だが、やはり中国だった。

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和平飯店

 
和平飯店に1週間滞在して上海を歩いた。外灘のシンボルであるこのホテルは、4つ星ながら租界時代以来の伝統と格式を誇っている。宿泊客も白人ばかりなら、フロントの対応もスマート、ロビーは静かで、まるでヨーロッパのホテルのようだ。 
ロビーを見下ろす2階には重厚な雰囲気の喫茶店と小さな書店。センスがいい、中国と違う、と喜んだけど宿泊料は別にして、ホテル内の物価も中国じゃない。見晴らしのよいレストランは、テーブルに置いたキャンドルの照明で食事をとるが、私は1度利用しただけで懲りた。


和平飯店を有名にしているのはお爺さんたちの老年ジャズバンド。帰りがいつも深夜になって、1週間の滞在でもまともに聞いていない。だが、ロビーで漏れ聞くのもいい感じだ。私の評価は高いが、白人客がコンシェルジェを独占して困る。親切なだけにやたら時間がかかるのだ。それとホテル玄関外にたむろする不審な人々。これは無視するに限るが。

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南京東路散歩


南京東路は上海一の繁華街。ということは、中国一の繁華街だといえる。



ピザハットからハーゲンダッツまで外資系ファストフードが勢揃いし、マンハッタン広場、ヨーロッパプラザ、ランドマーク広場、横文字を漢字に置き換えただけのショッピングセンターが軒を連ねている。通りは途中から歩行者天国になって、行き交う買い物客の間を遊園地の電車のような電動バスがゆっくり走ってゆく。広場の巨大なスクリーンが映像を流す。ここも中国ではないようだ。

歩行者天国の両端には親子3人連れが風船と買い物袋を手に楽しげに歩く姿のブロンズ像が立ち、観光客が記念写真待ちで人だかりをつくっている。私は江西省で巨大な毛沢東の像を見たことがあるが、南京東路の親子像はそれとは全く違うスタンスのものだ。一体、社会主義国がこんな消費者心理を突くような像を造るだろうか?でも、親子像は豊かさを目指す中国人にとって理想の姿なのだろう。これを見ると中国はもう市場経済から後戻りできないことを実感する。



通行人も一定の経済水準にある中国人ばかりだろうなと思わせる。だが、やはりここはお上りさんの街らしい。私には分からないが、上海おしゃれ小姐と南京東路の商品のセンスが微妙に違うという。値段はそこそこしてもこれが欲しいとまでは思わないそうだ。
だが、実家へのお土産にバッグを買おうとして驚いたことがある。欧州商場の革製品売場だ。いいバッグがあったが、色が気に入らない。服務員の小姐が商品棚の在庫を探してくれたけど「没有」だという。まあ仕方ない。没有はつきものだから、と思って店を出ようとすると「絶対にあるから待ってくれ」との言葉が。あっちの棚、奥の倉庫、とにかく手を尽くして探してくれた結果、気に入った商品が見つかった。ちょっと小姐が気の毒になって「もういいよ」と言いたくなるほど一生懸命だった。これも以前の中国では考えられない。
街を歩くと「歓迎光臨」の呼び声がかかる。私は台湾で「歓迎光臨」と言われて、さすが資本主義のサービス精神だと感心したことがあったけど・・・今や上海も普通の商業都市になったということか。


南京東路のおすすめは通りの西端、人民広場に面する新世界商場の歩道橋である。特に夜には大阪の心斎橋ばりのネオンの海に、はるか東方明珠のタワーが天を突いてそびえている。上海で一押しの揚州飯店、香港ばりのぎんぎら看板が目立つ黄河路美食街、雲南路美食街などのレストラン街にも近いので、夕食後の散歩で立ち寄ることができる。


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あやしい上海風呂 


南京東路から北へ1本入っただけで、中国のどこにでもありそうな夜の暗い通りに出る。そこに噂の上海風呂「浴徳池」がある。上海垢すりが体験できるのだが、ギリシャ風の派手な外観と暗い階段にちょっとひるむ。3階にフロントがあり、たくさんの男たちがたむろしているのでもっとひるむ。有無を言わさず連れて行かれた更衣室にも大勢の男が。

ええい、貴重品は持ってないし覚悟を決めよう、と意を決してタオル一丁になり垢すり男に連れられて大浴場へ。風呂は日本風か。熱めのお湯に浸かってから、風呂の縁に寝そべって垢すりが始まる。結構に痛い。
これが垢だ、と見せられるが、話に聞くほどではないなあ。
垢すりの後は別室へ行き、足裏と全身の按摩を白衣の按摩士から受ける。これは気持ちいい。けど、油断できないのがつらいところ。必死で中国語を話し、カモられないようにがんばってみる。
値段は200元で料金表のとおり。まあこんなところか。



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上海博物館


上海で一番おすすめはどこ?と聞かれたら、何はさておき上海博物館と答えるだろう。
内容といい、展示方法といい、見学者のツボを押さえた心憎い演出がされていて、1日いても飽きない、いや見て回ることができない博物館である。こんなに楽しい博物館は日本では大阪、吹田の国立民族学博物館くらいだろう。
特異な外観は「天円地方」(天は丸くて地は四角)という古代中国の宇宙観を表現している。内部の展示は玉製品、貨幣の変遷、書画などとテーマ別に分かれているので、時間のないときは好きなテーマの部屋だけ見ることができる。



おすすめは、陶磁器と少数民族文化、清朝貴族文化。この3つははずせない。
陶磁器コーナーでは、実際に工房が再現されて、職人がろくろを回したり絵付けの作業を行っている。本当の火は使えないだろうから、窯で焼くのは他の場所でやっているのだろうけど。
少数民族コーナーは、民族衣装が所狭しと並んで好きな人は必見。遊牧民族から南のタイ族まで、居住地の気候に適応した生活用品や衣類を見ることが出来る。ただ、清朝と同じく最上階にあるので、大抵はここまでくると時間がなくなる。初めからこのコーナーが目当てなら、最上階から見学した方がいいだろう。
清朝文化のコーナーは、展示室が満州族貴族の邸宅を模して作られている。重くて動けそうにない衣装や、豪華絢爛な家具骨董を見つめると、その細工の細かさに目がくらくらしそうだ。貴族というのは金のかかる生活をしていたものである。

さて、この博物館をすすめる理由は写真自由という寛容さと、ミュージアムショップの充実にある。ミュージアムショップは大きくて、工夫された欲しくなる記念品が多い。ここだけでも十分楽しいところ。自分用のお土産は博物館で買うように旅行を計画してもいいかもしれない。


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上海書城


人にすすめる場所は博物館だが、実は一番気に入っているのが上海書城。本屋である。
上海の書店通りである福州路に面したビルが全部ひとつの書店になっている。総ガラスの外観、明るくしゃれた内部、工夫された商品レイアウト、全てが今までの新華書店のイメージを大きく変えるものだ。学習熱心な中国人のこと、床に座り込んで真剣に本を読みふけっている姿が見られるが、楽しいので彼らに混じって平気で1日くらいつぶせるだろう。
私が好きなのは旅行ガイドのコーナー。中国の悪い印刷技術と粗雑な製本は過去のものになったのか?
ガイドブックは総カラーで写真が盛りだくさんである。名所の記述に終始して、交通案内やレストラン、買い物情報に乏しいのが日本のガイドブックとの大きな違いだが、中国人の旅行がまだ団体旅行が主流なので、自助旅行の情報は必要性が薄いのかも。

北京など中国国内でも有数の商業地は別にして、一般的な商業情報は地球の歩き方に軍配が挙がるだろう、と思ったらあった。地球の歩き方の中国語版が。国内をはじめ外国まで網羅されており、装丁、内容ともそのまま翻訳されただけのようである。中国お得意の違法コピーかとも疑ったが、裏書きには地球の歩き方との特別提携と謳ってあることを見ると、正式なものらしい。となると気になるのが「日本の歩き方」どんな記述が、と思って探すが日本旅行のガイド自体が見つからない。
中国人の日本旅行がまだ一部の団体にしか解禁されていないので、需要がないのだろうか。早く充実した日本ガイドを見てみたいと思う。
さて、上階には上海の中でも品揃えの充実したCDコーナーもある。この書店、私としては近くの有名な広東料理店杏花楼で飲茶をとりつつ、1日思う存分過ごすのが夢である。

下記は2003年の状況です。

人民公園から福州路を外灘に向かって歩く。
以前、上海書城で1日をすごすのが夢、とHPに書いたが、おもいがけず今日は夢がかないそうだ。
上海の書店、文具街である福州路にそびえる7階建ての巨大書店、それが上海書城である。1階の生活、娯楽、旅行書のコーナーから、3階の小説、歴史書のコーナー、4階の語学書のコーナー、と階ごとにテーマ分けされた膨大な書籍が詰まった本好きにとってはこれ夢の城なのだ。
まずは旅行書コーナーへ。上海人の日本旅行開放に伴い以前はなかった日本のガイドブックも見える。
空前の海外旅行ブームも手伝ってかアメリカやヨーロッパ、アジア方面の案内書は日本にある書店と大差ない品揃えだ。しかし、注目すべきは国内旅行のガイドブック。出版社の多さといい、扱うテーマや地域の多様さといい、圧倒されるほど。中国旅行好きなら全種類欲しくなってしまうだろう。
ここで調子に乗って買い込んでは南昌まで運ばなくちゃならない。はっと冷静になって、最終日の空き時間に必ず再来することを心に誓った。

結局、旅行書は南昌バスマップ付きで実用性が高そうな「江西熱線遊」を購入するにとどめた。
次は小説コーナーへ行き、中国語教室のメンバーへのお土産を探すことにしよう。あれこれ迷ったけれど、面白いか分からない現代小説はやめて、無難な四大古典小説の文庫版、10元均一本を人数分買い込む。「口語版」とあるから現代語訳されたものか。
メンバーには熱烈な三国志ファンがいるのできっと喜んでくれるだろう。それにパンダチョコなんかよりずっと安上がりだ。
語学書、中でも日本語学習のコーナーに学生らしき若い人たちが詰めかけている様子を眺め、7階のCD、VCDコーナーにある中国映画やチャイニーズポップスを数本選んで時計を見れば、なんともう2時じゃないか。うっかり書店で3時間近くをすごしてしまった。

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上海雑技団


今、私的にマイブームなのが雑技。地方雑技団の来日公演に関わってその魅力にはまってしまった。
それまで上海では何度も見たが、雲の上の存在で終わっていたのである。さて、上海観光の定番であろうその上海雑技団。南京西路の上海商場と、郊外にある上海馬戯場の2ヶ所で公演している。



交通の便がよく、毎日公演していて一般的なのは前者。長いエスカレーターを上がり、観客でごった返すロビーを通って劇場に入る。舞台は普通のステージで、狭い空間のために椅子乗りや輪潜り、躍動感のある表演のときなど、観客席に飛び込まないか心配するほどの迫力だ。
中国にあまたある雑技団の中でも知名度、技能ともにトップレベルなだけあって、田舎の雑技団員たちのまだあどけない感じに比べると上海雑技団の団員や演出にはスター性がある。やはり全国から上海を目指すのだろうか?





まだ新しい上海馬戯場は、雑技学校の隣に作られたドーム型の劇場だ。交通の便は悪く、タクシーが渋滞にはまってしまうと開演時間に間に合わないことがある。その分、観客で混み合うことはなかったが。
ここへ来たのは、上海商場では狭くて無理だった動物雑技をやっていること、何よりパンダの雑技が見られる唯一の場所だと聞いたからだ。残念ながらその日はパンダの体調が悪いらしく、出演はなかった。ドームの上から円形劇場を見下ろす格好なので、ちょっと迫力は上海商場に負けるかも。それでも他の動物は出たし、規模が小さい分、アットホームな感じもあってこちらも捨てがたい魅力はある。

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豫園巡り


私は何度か上海を訪れたことがあるが、中国の玄関として飛行機の乗り継ぎで滞在しただけなので、豫園に行ったことがなかった。上海だけに絞って旅行を計画したのは豫園を見ないと上海モグリじゃないのか、と思ったからである。幸い、上海は大都会ながら中心部の見所は徒歩圏内に収まってしまう。少し離れても地下鉄とタクシーでカバーできる。



外灘にホテルをとった私には、豫園も朝、昼の散歩コースだった。外灘の展望デッキを南に歩くと、黄浦江クルーズの乗船場の手前にレストランやケンタッキーフライドチキンがある。ここから陸橋を渡った辺りが、洋風建築群の南端である。庶民エリアの始まりだ。
外灘沿いの中山路から豫園の標識を見て市街方面に曲がると、突然、街の景色が一変する。物干し竿に洗濯物がはためく普通のアパート、上半身はだかでくつろぐおやじ、パジャマで出歩く人々、豚の頭が並ぶ市場、観光地でない普通の中国がそこにある。短い通りを抜けると丸くカーブを描く人民路。旧上海県城の城壁跡である。租界時代にあっても県城の内部には欧米列強の手が及ばなかった。生粋の上海なのだ。

やがて、けばけばしい門が見えてくる。豫園商場の入り口、ここからが豫園エリアである。私は初めて来たとき、このぎんぎらの中国趣味に違和感を覚えた。まるで観光客向けの中華街といった趣なのである。新しくて作り物っぽい中国建築が並ぶ様子も神戸や横浜の中華街みたいだ。おまけにその日は閉門時間が迫ってて豫園の庭園を見ることはできなかった。



2度目の豫園。今度は時間をとってじっくり商場を回ってみた。すると、なんとも面白いのである。豫園商場に網の目に広がる通路と商店、小吃の店は活気があってひやかしも楽しい。チープなばったもん大好きの私にとって、何を売っているか不思議であやしい豫園世界は1日いても飽きない場所になった。南翔小籠包もおいしいし、お茶も飲める。

豫園の有名な庭園を見たのは、結局3度目に来たとき。狭い空間を最大限に生かすために、びっしりと建物や岩、池、樹木が詰め込まれ、豫園商場と同じく迷子になりそうな不思議世界が広がっている。緑に包まれた豫園、駆け足で回るのはもったいない。池を眺める東屋で腰掛け、柳を見ながらぼーっとするときなど、ああ、リラックスしてるなあーという気になる。





豫園お土産で好きなのは金山農民画。原色で彩られた農村の生活風景は素朴で暖かい。気を付けたいのは赤い大きな人形。写真を撮ったら、すかさず物陰から現れたおばちゃんが2元を請求してくる。人形の影には小さな看板があったが、気づかずに請求される人が続出してた。まったく、どこから監視しているのだろう。

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龍華寺


龍華寺は上海の南西部、ちょっとはずれのごちゃごちゃした住宅街に位置する。上海では大きな寺院だ。
有名なのは龍華寺の塔。黄色と茶色で彩色された塔は形が素晴らしく、見ていて飽きない。寺の門前にはお供えの花や果物を売る店が出ているが、更なる観光地化を狙ってか、参拝者用の中国寺院風ホテルやレストランを建設中であった。



拝観料と引き替えに線香をもらって境内へ。黄色を主調としながらも、台湾や東南アジアの派手で装飾過多にも思える仏教寺院イメージと違い、しっとりと落ち着いている。禅宗寺院だからかな。お堂の前では大きな線香を手にした善男善女が熱心にお祈りしている。日本と違うのは結構に若い人が真剣に参拝している姿だろうか。
龍華寺の隣は龍華烈士陵園。かつて国民党政府が共産党員を大量に処刑した場所である。今では共産党の革命の英雄を讃える公園になっており、いかつい兵士や労働者像、祈念碑の周りには、市内では貴重な緑が広がっている。
上海南西郊外の観光拠点となる地下鉄1号線の万人体育場から近そうだが、私は周荘からの帰り道に寄った。その後、豫園の上海老街までタクシーを使い、ホテルまで歩いた。



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玉仏寺


上海の古寺めぐり、次は最も有名な玉仏寺へ。
上海駅や蘇州河に近い辺りは、上海の中心部ながら主要な通りと離れているため、個人商店の佇まいに泥臭い中国色が色濃く残っている。
ちょっと湿っぽい、すすけたコークスの匂いは空気が汚れている証拠だが、私にとっては「中国へ来たんだなあ」と実感させる懐かしい匂いでもある。
いくつか通りを越え、遠安路を東に歩く。風景が屋台の朝食屋が軒を連ね自転車の人々が行き交う庶民度満点の街に変わり、通りを挟んで黄色い寺院の壁が現れると玉仏寺だ。



さすが上海観光の目玉のひとつだけあって、玉仏寺の境内は多くの参拝客で溢れている。
本殿に祀られた多くの仏像も古い、落ち着いた風格があるようで、派手派手ピカピカの中国寺院イメージとは少し違うようだ。僧侶の読経に合わせて南無阿弥陀仏を唱える参拝者の脇を通らせてもらい、観光客の列について玉仏楼を参観する。日本人ツアー客が多いので、黙っていても解説を聞くことができるのだ。
ビルマで発見された巨大な玉で仏像を彫り、中国に運んだという高さ2mの玉仏は、想像したよりずっと大きくて立派だった。
上海人の友人が、「観光するなら玉仏寺が一番素晴らしいよ」と言っていたのもうなずける。

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周荘1日旅行


上海から蘇州、太湖にかけての江南地方には、豊かな水に恵まれて農業や漁業、運河を利用した水運で栄えた水郷の街が点在している。最近になって急速に観光開発が進み、聞き慣れない小さな街が次々と新しい観光地として脚光を浴びだした。周荘はそんな水郷の街の中では比較的早く開発されたところだが、ほんの数年前までは知る人も少なく、私が訪れた2000年でさえ、ホテルはまだ建設中で日本人観光客の姿もなかった。
今、旅行社の広告を見ると周荘は蘇州と共にすっかり観光コースの定番になったようだ。雑誌にもきれいに整備された街の様子が大きな写真で紹介されている。日本人観光客も多いだろう。



私はホテルで現地ツアーを申込み、ガイドと運転手付きで周荘へ行った。
虹橋空港を過ぎると一面の田園地帯が広がっている。地平線まで続く田圃の中をひたすら真っ直ぐな道が杭州方面に延び、車は100kmを超す猛スピードで国道を突っ走ってゆく。やがて、周荘の看板が現れ、車は田舎道に曲がった。観光開発のために道路拡幅工事の真っ最中である。
途中、森の中にきれいな七重塔が見える。聞くと古典小説「紅楼夢」の舞台「大観園」と、中国の少数民族村のテーマパークなのだという。ふーん、外観は本格的な清朝建築のようだ。でも中国のこと、遠路はるばる来てちゃちな観光施設だったらどうしよう。上海周辺のテーマパークの充実度は気になるところである。

淀山湖が右手に広がって、まもなく目的地の周荘に到着した。ここはもう江蘇省だ。
街の入り口では、湖に面した観光ホテルが建設中、車の入る新市街も店舗の建設や道路の舗装工事で全体に埃っぽい。街の角では駐車場待ちの観光バスやタクシーで渋滞が起きている。「ちょっと待って下さい」ガイドさんが車を降りて観光案内所へ走り、街への入場券を買って戻ってきた。
私たちは運転手さんを車に残してゲートから周荘の街に入場した。運河に沿って石畳の道が延び、漆喰と木の古い民家が続いている。運河にはアーチ型の橋がいくつも架かっているが、この橋を描いた絵がアメリカ大統領に贈られたことから、忘れられた水郷の美しさが再発見されたのだという。





平日のためか人出もまあまあで露店のおばちゃんものんびりしていて、超有名観光地のように売りつけてやろう、という剣呑さがないのもいい。ただ休日ともなると狭い街が中国人観光客であふれかえるそうだ。
街の見所は古い豪商の家。お揃いの黄色い帽子を被った老人会のお爺さんお婆さんたちと建物に入る。外は夏の暑さながら、屋内はしんと静かで暗く空気もひんやりする。民俗資料や書画が展示された部屋を見て回る。これらは日本の古い資料館とあまり変わらない感じだが、ここでは民俗資料として展示された生活が、田舎に行けばまだ一般的な人々や地域があるのだろう。

豪商の家を出てレストランで地元料理の昼食をとる。ツアー客は私たち2人にも関わらずどんどん注文される。「もういいですよ」と言うと、上海市内に比べて物価が安いので、ツアーで決められてる食事金額だと沢山注文することになるそうだ。運転手さんも合流して4人でテーブルを囲む。川エビの唐揚げがおいしくていくらでも食べられる。だが、あまり最初に食べるとメインが入らない。上海旅行中の最高の贅沢とばかりに挑戦したが、名物の豚の角煮まではお腹に入らなかった。




  


食後は周荘の目玉、運河遊覧船。おばちゃんが漕ぐ船はゆっくりと石橋を潜り、柳の緑に囲まれた運河を進んで行く。この白壁の街では、昨日も中国の時代劇が撮影されたようだ。そんな話に耳を傾けながらの船あそび。周荘はゆったりのんびりが似合う旅になった。

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