中国名山・長白山 本文へジャンプ

長白山


長白山は吉林省の東南部、延辺朝鮮族自治州と北朝鮮の国境にそびえる休火山。
山頂にカルデラ湖の「天池」があり、鴨緑江や豆満江、第二松花江の源流となっている。東北平原の南に隆起した独立峰で、東西200km、南北310kmものボリュームを持ち、標高は2744m。この山より北には、これ以上高い山がないため、北極海から流れ込む寒気がぶつかって気候は非常に厳しい。

その美しさと雄大さから、長白山は古来から人々に崇められてきた。韓国、北朝鮮、中国の朝鮮族などでは白頭山と呼んで、朝鮮民族の聖山になっている。ちょうど日本での富士山のような存在である。また、清朝を建国した満州族も長白山を民族発祥の地として、長らく入山禁止にしてきた。





長白山の山麓は、中国側でも朝鮮族がまとまって暮らす地域になっており、漢字とハングル文字が併用され、韓国語が飛び交うなど、中国の他の地方とは違う独特の雰囲気がある。また、料理や生活文化にも朝鮮と中国両方の文化が混ざり合っている。

長白山の入山期間は6月1日〜9月半ばまで。
長白山の観光インフラはよく整備されているが、辺地であり交通の便は悪いので、延辺朝鮮族自治州の州都・延吉から1日〜2日のツアーを利用するのが便利。長白山の入口にあたる安図県を過ぎると、都市らしい町はなくなり、朝鮮族の農村が点在する広大な長白山の裾野を延々と行く。鉄道駅もある二道白河鎮が山麓の町だが、周囲には何もない。さらに原生林が広がる裾野を進むと、ようやく標高が上がってきて、長白山北門に到着する。
延吉から240km、片道4時間以上かかる。

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長白山

長白山自然保護区の入口にあたる北門。
ここで観光バスや路線バスを降りて、入山料を払い、自然保護区内専用シャトルバスに乗り換える。
環保車と呼ばれる低公害バスは新しいきれいな車輌で、満州族の民族衣装を着たガイドが長白山の自然について解説する。谷底森林や小天池などを過ぎて、運動員村駐車場までくると、天文峰登山や、長白山温泉・長白瀑布方面へは再び乗換えがある。









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天文峰観光パジェロ

運動員村駐車場でシャトルバスを降りて、天文峰へ向かう観光パジェロに乗り換える。
天文峰は頭上高くそびえる長白山カルデラの外輪山のひとつで、山頂の気象台まで自動車道路が通じる。一般車輌は規制され、観光用のパジェロが2650mの山頂駐車場の間をピストン運転している。

この観光パジェロ、スリルも売りにしているのか、黒いスーツにサングラスといった映画マトリックスのような格好の運転手がタイヤをきしませながら猛スピードでヘアピンカーブの連続する山道をかっ飛ばす。車内ではしっかりつかまっていないと、Gがかかる。特に下り道は怖い。

日本の山岳地帯と同じような植生が見られ、車窓の風景は原生林からダケカンバ林、高山帯と移り変わっていく。眼下には広大な東北平原がどこまでも続き、遠くに森林中に浮かぶ島のように、二道白河の町が見えるものの、人工物はほとんど見えない。中国東北地方の広大さを改めて実感する。

山頂の峰々が近づき、2650mの天文峰駐車場へは15分弱で到着する。
ここにはレストランと売店があるだけ。ほとんどの人は、火山灰地特有のザラザラした道を踏みしめて、外輪山の稜線に登る。足元には真っ青な天池が広がり、中国と北朝鮮の国境をなす外輪山がカルデラ湖を取り囲んでいる。











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長白山天池

観光パジェロの駐車場から、外輪山の天文峰に登る。
火山灰地特有のザラザラの登山道を、滑らないように慎重に進んでいく。稜線に出ると、足元に真っ青な天池の眺めが開ける。天文峰の稜線からは、見る角度によって姿を変える天池の眺めが楽しめる。

天池は湖面の標高が2194m、天文峰との標高差は500mある。
南北5km、東西3km、最深部は312mにも達する天池には、ネッシーに似た怪獣が棲むといわれ、目撃例も多く新聞を賑わせている。どことなく神秘的な雰囲気を湛えた美しい湖だ。湖畔は高山植物のお花畑になるが、長白瀑布から2.4km、標高差300mの登山道を登る必要がある。

振り向けば、どこまでも東北平原が広がっており、長白山の自然などは日本にも似ていながら、そのスケールの違いに驚く。これを大陸的というのだろう。







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長白山温泉

運動員村駐車場から、シャトルバスに乗り換えて谷沿いの道路を行く。
周囲を山々に囲まれたU字谷の底に、終点の長白山温泉がある。韓国式建築のホテルが数軒あり、日本式露天温泉とうたった共同浴場もある。谷沿いに湧く長白山温泉は最高温度が82度、一般的な温泉でも60度近くあり、あたり一面から湯煙が上がっている。なんだか中国離れした風景だ。
ここの名物はやはり温泉卵で、あちこちに温泉卵を茹でて売っている人がいる。
長白山温泉から遊歩道を1km辿ると、長白瀑布がある。









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長白瀑布

天池から流れ出す水が、落差68m、中国東北地方最大の滝になって落ちている。
長白山温泉からダケカンバ林の中の遊歩道を約1km歩くと、滝を見晴らす河原に出る。遊歩道のあちこちにも温泉が湧いており、適温の場所には足湯の設備もある。
長白瀑布の横には、落石防止のロックシェードで守られた階段が、標高2194mの天池湖畔まで延びている。さらに徒歩で約1時間半は必要になる。











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延辺朝鮮族自治州の州都・延吉

中国東北、北朝鮮と国境を接する吉林省東南部は延辺朝鮮族自治州になっている。
自治州の面積は吉林省の1/4を占め、人口は約200万人。漢族、朝鮮族の他、満州族、回族など19の民族が住んでいる。そのうち、漢族が約56%、朝鮮族は約41%と多数を占める。

自治州の州都は延吉市。人口40万人で中国ではそんなに大きな都市ではないものの、韓国資本が流れ込んでいるため、市内には高層ビルやホテル、デパートも多く、歩行者天国を韓国直輸入のファッションで歩く垢抜けた人も多い。
高層ビル群が並ぶ布爾哈通河沿いには、夜にはライトアップされる遊園地もあり、ネオンが川面に反映して多くの人を集める。また、動物園のある人民公園では、朝鮮族の民族衣装・チマチョゴリの人を見かける。
東北の辺境都市ながら予想以上に賑わっている。

延吉市内のあらゆる公共施設や商店、看板には、漢字と併用してハングル文字が使われており、中国の他の都市には見られない独特の雰囲気がある。
焼肉や冷麺、狗肉料理など韓国料理店が多く、味付けは日本人によく合う。こうした料理や生活文化にも、中国と朝鮮の混ざり合った様子が見られる。

物価は中国の田舎としては高い。韓国資本が流入して価格を押し上げているのと、韓国へ出稼ぎに行く人が増え、そうして稼いだ外貨を投資するブームが起きたためだという。

また、韓国への出国ブームによって、朝鮮族の人口比率が下り、漢族が増えているようだ。














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北朝鮮との国境の町・図們

延吉市から40km、図們市は北朝鮮との国境に位置する小さな町。
脱北者が川を渡って中国に逃れてくる場所として、すっかり有名になった。

唯一の観光地・図們江公園からは、図們江(豆満江)をはさんだ対岸に北朝鮮の南陽という町を眺めることができる。すぐに手が届きそうな近さに対岸が見え、畑作業をしていたり、川べりでぼんやりと中国側を眺める北朝鮮人の姿が見える。日本で報道されるような緊迫した雰囲気を想像して行くと、あまりののどかさに拍子抜けしてしまう。

国境の橋以外には、武装した兵士や警察官の姿もない。川べりの公園には、対岸の北朝鮮を見るために訪れた観光客向けの商店や双眼鏡屋がずらりと並び、いささか趣味の悪い金正日グッズや、韓国・ロシアの民芸品を並べた店も多い。

中国人観光客が北朝鮮の貧しさを眺めて優越感に浸る場所のようだが、北朝鮮側の南陽も「うちだってビルくらい建てられる」と中国側に見せるために作った場所だといい、実際には一般住民は住んでおらず、川べりで憩う北朝鮮人たちも実は私服警官らしい。双眼鏡で眺めると、ビルにはガラスが入っておらず、生活感がまったくないのが分かる。





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